『僕だけがいない街』はご存知いくつも伏線が張り巡らされていますが、回収のされ方も絶妙で、中には一から読み直したり、しっかり考察をしないと気付かないものもあります。そこでこのブログでは複雑な伏線の解説をしていきます。
今回は、1巻4話の重要なあのシーン。佐知子がパーカーの男に感じた「気持ち悪さ」の正体についてです。
伏線の概要
1巻の4話【誘拐未遂 2006.05】にて。
悟が母・佐知子と買い物を終え駐車場を歩いているとリバイバルが起きる。悟は違和感を探すも見つけられないので佐知子に周りの注意を促す。佐知子が子供の手を引くパーカーの男と目が合うとリバイバルが終了。
後で佐知子は、パーカー男が誘拐犯であることに思い至ると同時に、『あの目の男を…あたしはしっている。覚えているのは「気持ち悪さ」とペアだからだ』と考える。
伏線の解説
この伏線のヒントは、5巻27話【誘拐の条件 1988.03】にあり、
答えは31話に書かれています。
27話で、悟は中西彩の尾行中に佐知子に会い、
その後八代の車と遭遇します。
このタイムラインは、
雛月加代を救い終え、次にターゲットとされる中西彩を守るために悟は尾行していましたが、
オリジナルのタイムライン(佐知子が違和感を感じたタイムライン)では悟はこの時尾行していません。
実はこの時中西彩は八代学に誘拐され、
その現場を佐知子は目撃していたのです。
そのため、この時の光景を重ねあわせて、
4話で佐知子はパーカー男(おそらく八代)に気持ち悪さを感じたのです。
31話では、
『リバイバル以前、お袋がスパーから出てみた景色は全く違ったものだったはずだ…!』
とあり、八代が中西彩を誘拐する現場と佐知子がその現場を一瞬見る絵が描かれています。
気付きにくいですが、一応この描写が4話の伏線の答えになっているのです。
あとがき
以上、佐知子が感じた「気持ち悪さ」の正体についてでした。
この伏線はほんと見事で、三部けいさんの構成力の高さが伺えますね。
27話以降じゃないと分からない謎でしたが、
27話の時点でこれに気づいた人は果たしているんでしょうか?
この作品にはまだまだすごい伏線が色々あるので、
また伏線をピックアップして解説していきたいと思います。