ヤングエース4月号(3月4日発売)の僕だけがいない街のネタバレと考察、そして次回33話の予想についてです。前回、悟は八代学の罠に掛かってしまい、車ごと海に沈められ、僕街史上最大のピンチという場面でしたね。今回も考察等行なっていきますが、大いにネタバレしているので、ネタバレが気になる人は先に本誌を見て下さい。
32話の概要
「悟はどうなったのか?リバイバルがまた起きるのか?誰かが助けに来るのか?」
と休載を挟んで2ヶ月の間ワクワクして待っていましたが、
今回は八代の回想だけでしたね…。
さて、以下が32話の概要です。
- 八代学は常に学年トップの成績で両親から溺愛されていたが、対称的に2歳年上の兄は暴力的で問題をよく起こしていたため両親からの干渉は減っていっていた
- 八代学は兄から暴力を受けていたが、それは親から必要とされなくなった兄の“代償行為”だと理解していた
- 兄は女児を物置に連れ込み行う性的な悪戯を八代に手伝わせる
- 女児を上手く誘いこむことができると暴力を受けなくなったが、兄の言いなりになっている自分には納得がいかなかった
- 小6の時に小1の白鳥潤と思われる人物がイジメられているのに対し、激励の言葉を送る
- クラスメイトから預かったハムスター6匹を水の入ったビンに入れると一匹だけが他の力尽きたハムスターを踏み台にして生き延びていた。この光景は、当時八代が好きだった芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の話よりも刺激的でシビれた
- 中1の時、兄の悪戯中にいつものように見張りを命じられていたが、スパイス(生き延びたハムスター)のカゴを物置の入り口に置き、兄には自分が見張っているよう思わせた上で友だちと遊ぶためにその場を離れた
- たまたま物置の前に人が来たせいで、誤って兄は女児を殺害してしまう
- 兄に女児の遺体を隠すのを手伝うように促されてから、兄の頭上に一本の蜘蛛の糸が見えるようになる
- 兄が自分に殺害の罪を着せようとしているとしているのに気付き、兄を自殺と見せかけ殺害する
- 兄の死後、両親は離婚し、母親とともに暮らす
- 小学校教員を目指す中、2週間の教育実習中に目をつけた女児(かつて悟の回想に出てきたアッコねえちゃん)に目をつけて物置に呼び出し事に及ぼうとするも、子供悟により阻止される
- 八代には2歳年上で心理カウンセラーの婚約者がいて、児童心理を学んだり、自分の正常性を外にアピールするのに役立ったが彼女自身への興味はまるでなかった
- 婚約者は女児殺害事件について八代を疑う(この時婚約者の頭上に蜘蛛の糸の描写)
- 婚約者を自殺と見せかけて殺害する
- 八代は自分の頭上にも蜘蛛の糸が下がっているのに気付く
32話の考察
さて、今回は八代の子供の頃の話で、
八代が誘拐殺人をする動機に関係するエピソードでしたが、
結構解釈が難しかったですね。
僕なりに色々考察してのでご覧ください。
蜘蛛の糸と一匹だけ生き残ったハムスターの話について
32話には八代に影響を与えたと思われるものとして、
『蜘蛛の糸』と『ハムスター』がピックアップされていましたが、
これらはどういう意味があるのでしょうか。
蜘蛛の糸は、他を蹴落とすことで自分も地獄に落ちてしまうという話。
ハムスターは、他を犠牲にすることで生き延びることが出来たという話。
これらは対比の関係があり、
八代は蜘蛛の糸よりも一匹だけ生き残ったハムスターの光景の方が刺激的であったと言っています。
恐らくこの事が、
自分の危機には他者を裏切ってでも助かろうとする、
そんな八代の人格を形成する要因になったということを表しているのではないでしょうか。
八代に見える蜘蛛の糸について
八代兄、八代の婚約者、八代自身それぞれの頭上に現れた蜘蛛の糸についてです。
これについては解釈がほんとに困難でした。
最初は『八代=カンダタ』、『八代兄・婚約者=カンダタの後を追う亡者たち』という図式で、
「八代はハムスターに影響されたので2人を蹴落として自分が助かる結論を出した」
ということかと思いましたが何となく違うみたいですね。
八代自身が糸を切っているような感じなので、
『八代兄・婚約者=カンダタ』そして『八代=糸を自在に切ることが出来る神のような存在(?)』といういことでしょうか。
でも、そしたら最後に八代自身に蜘蛛の糸が現れたのはどういう意味があるのでしょうか?
もしかしたら、
ただ単に自分がその人の人生(生死)を左右することが出来るということを表しているのかもしれません。
■追記
蜘蛛の糸に関して、自分なりの結論が出ました。
やはり、
『八代=カンダタ』、『八代兄・婚約者=カンダタの後を追う亡者たち』
という図式です。
カンダタが自分だけが助かるため亡者たちを蹴落としたように、
八代は、自分の身を脅かすに兄と婚約者を殺害しました。(糸を切る描写)
そしてその後、鏡を見ると自分の頭上にも糸があることに気付いて笑います。
これは最初意味がわからなかったのですが、
これは、他を蹴落としても自分は無事であったということを意味しているのではないでしょうか。
ここで、カンダタとハムスターを今一度思い返してみると、
カンダタは他を蹴落とすことで自分も地獄に落ちてしまいましたが、
ハムスターは、他を犠牲にすることで生き延びましたね。
つまり、八代は、
「自分はカンダタ(他を蹴落として自分も落ちていった)ではなく、ハムスター(他を蹴落として自分だけが助かった)であった」
ということを確認して笑ったという描写だったのではないでしょうか。
色々考察しましたが、
これ以上の答えは考えつきませんでした。
八代が殺害を行う動機について
八代の過去がわかったということで、八代が殺害を行う動機について考察してみましょう。
八代が殺害を行うのには2つのパターンがあります。
- 自分の危機の時
- 女児殺害
それぞれ解説します。
自分の危機の時
他を犠牲にして生き延びたハムスターの影響だと思いますが、
八代は自分が危機に陥った時に躊躇なく殺害を行います。
これについては動機としては明確ですね。
これまで描かれたものでは未遂を含めて以下の人物に対するものが挙げられます。
- 八代兄
- 八代の婚約者
- 佐知子
- 悟
- ヒロミ
- 愛梨
女児殺害
そして女児殺害の動機についてははっきりしません。
32話に、
『僕には抑え続けてきた衝動があった。』
とありますが、八代は元々危ない人間であったのかもしれません。
それか、八代のよく使う“代償行為”というのが関係するのでしょうか。
兄を殺害した代償に、
兄の代わりに女児を殺害している…というのはあるかもしれません。
32話の気になった所
この他に気になったことについてです。
- 「学…お前、何てことしてくれたんだ…!」の意味
- 八代の年齢について
「学…お前、何てことしてくれたんだ…!」の意味
『僕は「何てことしてくれたんだ」という兄の言葉を取り違えていた事に気付いた』
とありますが、最初よく分からなかったのですが、見返すと何とか理解出来ました。
この描写の直前にスパイスのひまわりの種が無くなっていて、
その次に女児の遺体の場所が描かれているので、
女児の遺体の所に兄が潜ませたということが伺えます。
八代の『僕は…』というモノローグがこのことを指していると考えると、
八代兄が八代に殺害の罪をなすりつけようとしているのがわかりますね。
もしかしたら、これは普通に読んでいたら分かるレベルのものかもしれませんが、
一応解説させて頂きました。
八代の年齢について
今回、白鳥潤と八代の関係が出てきており、
また過去に白鳥潤の年齢が分かっているので、
八代の年齢が判明しました。
まだ現時点では重要な情報ではありませんし、
今後何かに繋がるとも限りませんが、一応整理しておきましょう。
今回分かったのは、八代が小6の時に白鳥潤は小1なので、
『八代と白鳥潤の年齢差は5歳である』ということ。
そして、『白鳥潤は1988年6月の時点で23歳である』ということが分かっています。※2話参照
なので、八代の年齢は、
- 1988年6月:28歳
- 2006年5月:46歳
ということが分かりました。
ただ、正確な生年月日が分からないので、誤差±1歳程あるかもしれません。
あとがき
以上、32話のネタバレや考察についてでしたが、
32話はまた一段と難しかったですね。
八代に殺害されそうになっていた悟がどう助かるのか、
ずっと楽しみにしていましたが、33話以降に持ち越しということです。
僕街に出てくる殺害事件のほとんどの犯人が八代ということが確定しつつあり、
物語も終盤に差し迫っているのかなと思います。
6巻で終わるとなればあと4話程なので、
どういう結末になるのか、どういう展開に持っていくのか非常に楽しみです。
さて、次回33話はヤングエース5月号(4月4日発売)なので、
発売されればすぐに更新したいと思います。
※更新しました
➡僕街33話のネタバレ・考察はこちら
また、以下にこれまでの伏線や考察等をまとめたので、こちらもご覧ください。
はじめまして。
考察楽しく拝見させて頂きました。
お恥ずかしながら、ひまわりの種の意味がわからなかったので、解説が大変ありがたかったです。
「八代に見える蜘蛛の糸について」ですが、私なりの解釈としては、運命の糸が見える相手=カンダタであり、理由や状況は違えど、他者(八代)を蹴落とそうとする者として、兄も婚約者もカンダタだったのではないかと思います。
そして、婚約者を蹴落とした自分も結局はカンダタであり、自分の頭にも糸が見えたのであろうと解釈いたしました。
自分はあまり読解力がなく、また考察を読ませて頂く機会があるかと思いますので、これからもがんばってください。
兄と婚約者は「八代の足に群がる亡者」である
という前提のもとでの推測です。
【他人の蜘蛛の糸についての当初の考え】
自分は釈迦であるために、カンダタや亡者たちの糸を断ち切る事が出来る
【自分の蜘蛛の糸が見えた際の考え】
自分はカンダタであり、足元の糸を切る事ができるが、同時に上位者から糸を切られる可能性がある”亡者”であることを自覚した
上記の根拠となるのは6巻冒頭の八代の独白。
「もしカンダタの足元で糸が切れていたら?」
「その時 釈迦はどうしていただろう?」
ここで八代が落胆や恐怖ではなく歓喜の表情である理由は、
「リスクも鳴く平穏に今この瞬間こそが僕にとっての死そのものだ」という発言から、自らの蜘蛛の糸を切ってくれる存在を心の底で望んでいたからだと思われます。
であるからこそ、悟の回復を15年間も待ち続けられたと解釈できますし、最終回もそのような伏線が活かされる可能性が高いです。
生き残ったハムスターは、他のハムスター達を意図的に殺して生き残った訳じゃ無いよな。
水の中で他のハムスター達と同じようにもがいてたら、先に息絶えたハムスター達の体に下から支えられる形で、生き残ることが出来た訳で。
八代学は、カンダタには成れても生き残ったハムスターにはなりようが無いよ。
だって、水に落ちて真っ先に他のハムスター達を殺そうとする様なハムスターを、他のハムスター達は多分許さないだろ。
一番最初に沈むハムスターが八代学だよ。
いじめられていた少年の話はどのように解釈すればいいのでしょうか?
いちおう私の推測も書かせていただきます。
外履きは「糸」だったのではないかと考えています。
つまり、八代自身は糸を垂らすことのできる「釈迦」だったのではないかと。。
そうするとこの時点では、八代自身は自らを「釈迦」と捉えてていたとなるのですが、どうなんでしょうか?
あの糸、ずっときになつ極楽には、覚ったものである釈迦と見えない罠を張り獲物を捕食する蜘蛛がいます。
地獄には、お互いの足を引っ張り合うカンダタたち亡者がいます。
瓶のなかで生き残ったスパイスは亡者でもあり、善悪を区別しない蜘蛛でもあるのではないでしょうか?
どんな人間も糸一本で極楽と繋がっているとして、そこに救済を見い出すのか、あるいは「善行も悪行も本質は同じ、現状に罪悪感を抱く必要はない」と吹っ切るのか。
八代が鏡のなかの自分糸が垂れているのをみてハッとし呆れたような笑顔になるのは、蜘蛛になることを選んだはずなのに知らず知らずのうちに救済の可能性をさぐっている自分に呆れたからではないかと、思います。
あの糸、ずっと気になってました。
こちらの記事を拝見して改めて考えてみたのですが、八代蜘蛛人間説というのはどうでしょうか。
極楽には、悟ったものである釈迦と見えない罠を張り獲物を捕食する蜘蛛がいます。一方、地獄には、お互いの足を引っ張り合うカンダタたち亡者がいます。
瓶のなかで生き残ったスパイスは亡者でもあり、善悪を区別しない蜘蛛でもあるのではないでしょうか?そのことに、八代はシビれた。
どんな人間も糸一本で極楽と繋がっている亡者だとして、そこに救済を見い出すのか、あるいは「善行も悪行も本質は同じ、現状に罪悪感を抱く必要はない」と吹っ切るのか。
八代が鏡のなかの自分に糸が垂れているのをみてハッとし呆れたような笑顔になるのは、蜘蛛になることを選んだはずなのに知らず知らずのうちに救済の可能性をさぐっている自分に気付き呆れたからではないかと、思います。
悟は、いいカンダタ。
八代学は代償行為によって救われるという構図を信仰したい
それを検証するために代償行為(虐待、いじめ、人助け、etc…)をしていながら、救われていない人間を死の淵に落とす
それでも助かった人間、つまり代償行為によって救われたと考えられる人間を可愛がる(信仰する)